筑波大学 特別経費プロジェクト 「生命の樹」研究機能の充実 -多様な非モデル生物研究に基づく生命原理の再構築-

プロジェクト内容

生命の樹-Tree of Life-

生物学では、「生命の樹」は生物の類縁性や多様性、進化的関係性を示す系統樹のことであり、19世紀にエルストン・ヘッケルにより描かれ系統樹はリアルな樹木をイメージさせるものであった。古くは生物の形態を基に描かれていた系統樹も、現代では生物のもつ遺伝子のDNA配列などを基に描かれる分子系統樹が多くの研究に用いられている。最新の分子系統樹を基に、生命の樹を構成する全生物をグループ分けすると3つのドメイン「真正細菌」「古細菌」「真核生物」に分かれ、我々ヒトも含まれる真核生物は8個の大グループ(アーキプラスチダ、アメーボゾア、アルベオラータ、エクスカバータ、オピストコンタ、ストラメノパイル、リザリア、系統不明の真核生物)に分けることができる。

プロジェクト目的

生命の樹を構成する多様な生物の内、これまで研究が盛んに行われてきたモデル生物はいずれも3つのグループ(真正細菌、アーキプラスチダ、オピストコンタ)に限定される。生物全体の生命原理を探求するためには、モデル生物からの知見のみでは不十分であり、生命の樹の大部分をしめる非モデル生物からの知見が必要となる。一方、非モデル生物では、遺伝子/タンパク質の分子情報が十分蓄積されておらず、遺伝子組み換え実験技術も整備されていないため、細胞機能や分子機構に関する基礎的な知見が不足している。そこで本プロジェクトでは、先端研究手法を導入して生命原理解明の鍵となる非モデル生物の研究基盤データを整備する。得られるデータを、既存のモデル生物を含む多様な生物のデータと比較することで、生命の樹の幹を司る生命原理の探求し、既存の原理の再構築を目指す。

プロジェクト計画

平成26年度よりスタートした本プロジェクトでは、筑波大学生命環境系の5名の教員を配置した研究機能推進ラボを新設して、生命の樹を構成する各生物グループを代表する非モデル生物を対象として、研究基盤データを得るために次世代シークエンス法によるゲノム・トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析、バイオイメージング解析などを進める。研究機能推進ラボをプラットホームにして、非モデル生物の研究者間、および非モデル生物の研究者とモデル生物の研究者の間の共同研究体制を強化し、非モデル生物の研究基盤データを短期間に集中的に取得する。迅速に研究を進めるために、筑波大学内、下田臨海実験センター、遺伝子実験センター、国立感染症研究所と連携して最先端機器の共同利用体制を確立する。また、計算科学研究センターの超高性能計算機を用いることで、これまで類をみない大量データの多次元的解析を可能にする。

実施したアカデミックイベント